●ニキビと毛穴と、食べ物の関係
女性を悩ませるニキビ。世界人口の10人に1人がニキビに悩んでいるといわれるくらい、ニキビはありふれた皮膚病です¹⁾
ニキビと食べ物は、関係があるのか、悩んでいる人も多いでしょう。
そもそも、ニキビの原因は、何でしょう。
基本的にニキビの原因の多くは、ホルモンや免疫など、体の中にあります。
ニキビ菌(アクネ菌)やニキビダニ(顔ダニ)などがニキビの原因であるとよく言われますが、これらは肌の常在菌、つまり、健康な人でも持っているもので、悪い菌ではないのです。
その菌が毛穴に住んでいても、通常、ニキビはできません。
皮脂分泌のバランスがくずれたり、何らかのホルモンの乱れなどで毛穴の出口がふさがれたりすると、菌やダニが異常に増えてしまい、ニキビの原因になります。
つまり、菌が増えやすい肌環境があるから菌は増えるのです。
菌そのものでなく、肌環境に目を向ける必要があります。
たとえば公園にゴミが散らかっていて、カラスが異常に増えたとしましょう。
カラスばかり追いかけていても、カラスはいなくなりません。わなをしかけて捕まえても、どこからともなく飛んでくるでしょう。
ゴミをきちんと片付けないと、カラスがいなくなることはありません。
ニキビ菌もカラスのようなもので、どんなに殺菌しても、どこからでも無限に増えてしまいます。
体の中からバランスをとることで初めて肌表面のバランスが整い、ニキビ菌が増えすぎない環境ができてきます。
肌は体の一部ですから、肌環境と食べ物は、当然、「関係おおあり」です。
カラスが繁殖しないきれいな公園を作るように、健康な肌環境を作ることを目指しましょう。
ニキビの原因にはもちろん、食べ物以外にも、ストレスや寝不足など、生活全般が関係します。
ここでは、食べ物について解説します。
●ニキビの原因となる食べ物
・チョコレート
ニキビとチョコレートの関係については、100年前からいろいろな研究がなされていますが、まだ、結論にいたっていません。関係があるという説と、ないという説があります。
ただ、最近になって、関係があるという有力な論文がいくつか出されました。
たとえば、ニキビ体質の男性25人が、99%カカオのチョコレートを一日25gずつ食べ続けたら、4週間であきらかにニキビが増えました²⁾。25gというのは、小さめの板チョコ一枚の半分くらいの量です。
もちろん、食べ物の影響には、個人差があります。
チョコレートを食べてもあまり影響ないという人もいますが、ただ、食べ物の影響は、すぐに肌に出るわけではなく、また、その時の体調によっても、出るときと出ないときがあります。そのため、肌との関係は、本人はなかなか気づきにくいものです。
慎重に、また、数か月という長い目で、食べ物の影響が出ていないか、自分の肌を観察しましょう。
チョコレートのカカオポリフェノールは体によいといわれますが、他のカカオの成分が体内の炎症に関係しているという報告もあり、良い面ばかりではないようです³⁾。
・スイーツ全般
女性にとっては耳の痛い話が続きますが・・美肌を手に入れるためには、目をそむけてはいけません。
Added sugar(添加糖)を頻繁にとっている人は、ニキビが30%出やすいという報告があります⁴⁾(添加糖は、食べ物に入れられた砂糖のことですが、詳しくは、一回目のブログをご覧ください)。
また、小麦を含む食べ物も同様です。特に、精製された白い小麦粉を使ったもの。つまりパンやケーキ、クッキーなど全般です。
急にそんなこと言われても、甘いものは簡単にやめられない!という人のために、科学的にご説明します。
添加糖や白い小麦粉は、すみやかに吸収されて体内でブドウ糖になります。するとインスリンが出て、それが男性ホルモンを活性化して、皮脂が増え、ニキビができます。インスリンはさらにIGF‐1(インスリン様成長因子)という物質を増やして、これが毛穴をふさいでしまいます⁵⁾。
これらの怖いところは、ニキビができるだけでなく、毛穴が開く原因にもなるところです。
毛穴レスの美肌を目指すなら、スイーツは、多くても週に一度にとどめましょう。
甘いものがほしいときは、スイーツのかわりに、果物、栗、おいもなどの自然の甘味をとりましょう。
・ω(オメガ)6脂肪酸
大豆油やコーン油に含まれるω6脂肪酸を摂りすぎると、体内に炎症を起こしてニキビの原因になることが知られています⁶⁾。
人間の体に必要な油としていくつかの必須脂肪酸があります。ω6脂肪酸も必要なもののひとつですが、現代人の食生活ではこれが過剰になり、ニキビやアトピー性皮膚炎のほか、心筋梗塞などの原因にもなっているといわれます。
大豆油やコーン油は、安価で加工食品に多く使われています。外食、テイクアウト、レトルトなどのほか、パンやお菓子にも広く使われています。食品の表示で「植物油」とあるものは、このω6を多く含みます。
これを摂らないためには、外食や出来合いの物を極力食べないことです。自宅ではω6の少ないオリーブ油を使いましょう。
ω3脂肪酸という魚に含まれる油は、ω6と反対に、血液をサラサラにして、炎症をおさえるため、アトピーなどのアレルギー疾患や肌荒れを防止します。
●Q&A
Q ニキビの原因は乾燥?
A 乾燥が原因になることは、まれです。
大人ニキビの原因は乾燥であると、肌診断などで言われる人が多いようですが、皮膚科学的にみれば、乾燥が大きい要因であるとはいえません。肌のうるおい(水分)が少なくても多すぎてもニキビができることがあります。また、適度にうるおいがある肌でも、皮脂が過剰になるとニキビができます。これについては後日解説しますが、要するに、保湿は大切ですが、保湿すればニキビが治るというものではありません。適度なうるおいを保つようにスキンケアしながら、体の中から、食生活や生活リズム全般を見直すことが大切です。
Q 甘いものは昔から食べていたけれど、今までニキビはできなかった。だから私のニキビは甘いものと関係ないのでは?
A 積み重なって肌に影響することも
甘いものも、その他の食生活の乱れも、何年も積み重なって肌に影響してくることがあります。昔からの習慣だから、ニキビと関係ないとはいえません。栄養素は少しずつ体内の免疫などに影響し、急にバランスを崩した時に肌に現れてくることがあります。
むしろ、食生活が悪くても、短期的には肌や体に影響は出ないものです。栄養はある程度、体内にためておけるからです。
逆にいうと、食生活を改めても、すぐに肌がよくなるとは限りません。今まで蓄積された影響が抜けるまでに、数年間かかることもあります。
まとめ
ニキビや毛穴で悩まないために、食生活はとても大事です。
添加糖を含むスイーツは男性ホルモンを増やして毛穴の開きとニキビの原因に。
チョコレートやω6脂肪酸は体内の炎症を起こしてニキビやアトピーなどにつながることも。
これらを避け、魚やオリーブ油の質の良い油と、抗酸化物質を含む緑黄色野菜をとることが、美しい素肌を生み出します。
¹⁾Br J Dermatol. 2015 Jul;172 Suppl 1:3-12. doi: 10.1111/bjd.13462.
²⁾Int J Dermatol. 2016 May;55(5):587-91. doi: 10.1111/ijd.13188. Epub 2015 Dec 29.
³⁾Cytokine. 2013 Apr;62(1):40-3. doi: 10.1016/j.cyto.2013.02.003. Epub 2013 Mar 1.
⁴⁾J Eur Acad Dermatol Venereol. 2012 Dec;26(12):1503-9. doi: 10.1111/j.1468-3083.2011.04329.x. Epub 2011 Nov 10
⁵⁾Mol Nutr Food Res. 2008 Jun;52(6):718-26. doi: 10.1002/mnfr.200700307
⁶⁾Semin Cutan Med Surg. 2005 Jun;24(2):84-91.