新型コロナウィルスについて、現時点(2020年3月10日)での情報をまとめます。
・喫煙者は重症化率が14倍~中国の報告より~
新型コロナウィルス(COVID-19)が世界に脅威を広めています。
Chinese Medical Journalという中国の医学雑誌に2月28日に投稿された論文によれば、昨年12月30日から今年の1月15日までに武漢で新型コロナによる肺炎を発症した78人のうち、喫煙歴のある患者は、ない患者に比べて、重症化する比率が14倍(OR)高かったとのことです¹⁾。
中国でもイタリアでも、死者の7割以上が男性です。男性のほうが喫煙率が高いことが影響しているのではないかといわれています。
・主な症状
咳、発熱、呼吸困難が、新型コロナ感染を疑わせる症状です。
初期症状として最も多いのは発熱であり、38.2度以上の発熱があった人は重症化しやすいことが中国での統計でわかっています¹⁾。
・ウィルスを殺す薬はない
ウィルスについてまず知っておくべき大事なことです。
ウィルスは細菌よりも小さな病原微生物で、抗生物質も効かず、基本的に、ウィルスを殺す薬はありません(例外として、インフルエンザやヘルペスウィルスに対しては増殖を抑える薬があります)。
風邪は大半がウィルス感染ですが、人間は、それらのウィルスにかかった場合、自分の免疫でウィルスを排除して生きています。「風邪薬というものはない」とよくいわれますが、風邪そのものを治す薬は存在しません。風邪薬を飲んだから治ったのではなく、自然治癒しているのです。
風邪の原因となるウィルスは、コロナウィルスとライノウィルスが多く、その他、RSウィルスやアデノウィルスなどがあります。
遺伝子型が変異した新しいタイプのコロナウィルスが動物から人間に感染して拡大し、世界の脅威となっているのです。
・免疫を高めよう
感染症全般に対して、ある種の免疫を高める漢方などが有効です。新型コロナウィルスへの有効性を示すデータはもちろんまだありませんが、ほかに有効な薬剤もない中、試してみるのも一案でしょう。
以下のようなものがおすすめです(いずれも市販されています)。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)・・免疫を高める漢方の代表。風邪やインフルエンザにかかりにくい強い体を作る。若年者も高齢者も、ウィルス感染が流行する時期に、予防的に使用するとよい。
清肺湯(せいはいとう)・・字のごとく、肺をきれいにする漢方。喫煙者や、肺に疾患がある人に。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)・・のどの、異物を排泄する機能を高める。高齢者で、むせりやすい人、風邪でなくてもしょっちゅう咳をしている人に。
・お茶のカテキン効果
茶カテキンは、インフルエンザやその他の風邪のウィルスの進入を防ぐことがわかっています²⁾。
ウィルス感染予防のために、緑茶を飲むこと、緑茶でうがいすることが海外でも推奨されています。
・咳にハチミツうがい
ハチミツも有効です。イギリスの国立医療技術評価機構( National Institute for Health and Care Excellence, NICE)では、ハチミツが粘膜の炎症をおさえて感染も防ぐことから、風邪の症状の緩和のためにハチミツうがいを推奨しています。
むやみな抗生物質の使用は、効かないだけでなく耐性菌が生じるリスクがあります。風邪やその他のウィルス感染に対して抗生物質を使用することは避け、子供を含め、ハチミツを使用することが推奨されています³⁾。ただし1歳未満の子供にはハチミツは使用できません。
・致死率は3%前後?インフルエンザとの比較は?
新型コロナウィルス感染症と診断された人の中での致死率は2~3%といわれ、いわゆる季節性インフルエンザの0.1%よりも高くなっています。
ただし、単純にその数値を比較してどちらが怖いという言い方をするのも間違いです。
インフルエンザと新型コロナウィルスでは以下のような大きな違いがあります。
・新型コロナウィルスは、感染しても80%の方が、軽症もしくは無症状。16%の人が
風邪様の症状や倦怠感を感じ、およそ3%の人が重症化する。
→感染しても無症状や軽症の人が多いこと、現状、検査も行き届いていないことから、潜在的に、感染者はもっと多いと予想される。つまり、重症化率は、上の数字よりも低い可能性がある。
・インフルエンザは、若い健康な人でも致命的になりうる。
2008年の日本のデータですが、インフルエンザの致死率は、5歳未満で0.37%、70代以上の人で0.22%、40代でも0.19%となっています。乳幼児と高齢者のリスクが高いのですが、全年齢を通して死亡者がみられ、また、特に病気を持っていない、若く元気な人でも突然、インフルエンザによって脳炎や臓器障害を起こして死にいたることがあります。
・新型コロナウィルスは、若く健康な人では(喫煙者を除き)リスクが高いとはいえません。中国からの報告によると、新型コロナ感染者のうち18歳以下の人は全体の2%。重症化率はそのうちの3%ということです。
・新型コロナウィルス感染が重症化しやすい人⁴⁾
高齢者
喫煙者(過去に喫煙していた人、電子タバコ使用者、受動喫煙の人も含む)
以下のような持病がある人(高血圧、糖尿病、心血管系の疾患、慢性呼吸器疾患、がん)
・Q&A
以下、米国および欧州疾病予防管理センターからの情報に基づいています(3月10日現在)。
・どうやってうつる?
症状がある人の、咳やくしゃみ、呼気(吐く息)などからウィルスを含む飛沫が拡散され、それを吸い込むと感染します。感染者のおよそ2m以内の距離にいると感染リスクが高まります。
また、ウィルスがついた手で鼻、口、目などをさわると感染します。ドアノブやテーブルについたウィルスは、3日間生きているといわれます⁵⁾。
・予防法は?
顔を手でさわらない。
まめな手洗い。
よくさわる場所をアルコールで消毒する(ドアノブ、テーブルなど)。
・潜伏期間は?
2~14日と推定されています。
・手も消毒すべき?
手を石鹸と流水で20秒洗うことが推奨されています。
アルコール消毒は、手が洗えない場所で使用しましょう⁵⁾。
頻繁に消毒薬をつけると手が荒れる人もいます。テーブルなどの洗えないものはアルコールで拭くのもよいですが、手は流水で洗えば十分であり、アルコールで消毒しないといけないということはありません。手が荒れてしまうと、よけいに雑菌が繁殖しやすくなるので、荒れるほど消毒することは控えましょう。
アルコールは60%以上の濃度のものが有効です。
・マスクは有効?
ウィルスがマスクに付着し、マスクの着脱のときにそれが手や顔についてかえって感染リスクを高めるという意見もあります。SARSが流行したときに、不適切なマスクの着脱によって多くの医療関係者が感染したという事例があります。マスクを使用するのであれば、着脱のときに表面に触れないよう注意し、外したものは毎回捨てましょう。
ただし、すでに感染している人は、マスクをすることで人にうつすリスクを減らすことができます。感染しているかいないかわからなくても、風邪のような症状がある人は、マスクをすることが勧められます。風邪のような症状があって、マスクが使えないときは、咳やくしゃみはティッシュ、ハンカチ、もしくは自分の袖口でおさえて、飛沫がとびちることを防ぎましょう(ヨーロッパ感染予防センターのHPより)。
・スマホに注意!
電車のつり革など、いろいろなものを触った手でスマホに触る人は、そこにウィルスがついている危険性があります。スマホをさわりながらご飯を食べるなど、非常に危険な行為です。どうしても触りたい人は、スマホをアルコールでよく拭きましょう。
・妊婦はうつりやすい?妊婦にうつると危険?
妊婦が特に危険であるというデータは現状存在しません。通常の人と同じ予防策をとることがすすめられています。
・東北医科薬科大学作成の、感染対策ハンドブックです。
ご活用ください。
http://www.hosp.tohoku-mpu.ac.jp/info/information/2326/
²⁾https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6100025/
⁴⁾https://www.ecdc.europa.eu/en/novel-coronavirus-china/questions-answers
⁵⁾https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/about/prevention-treatment.html