ドクター吉木の『知るログ』

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日焼け止めとして安全かつ有効といえる成分は2種類のみ~FDAの発表より~

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世界で初めての日焼け止めは、1944年、なんと第二次世界大戦中に発売されたコパトーンだったといわれます。

それから70年以上が経ちました。

FDA(アメリカ食品医薬品局)は昨年、30年ぶりに日焼け止めの効果や安全性に関する見直しを行いました。

その結果、驚くような発表がなされました。

 

●日焼け止めの中で安全で有効な成分は何か

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日焼け止めにはさまざまな成分が使われていますが、それらは大きく2つの種類に分けることができます。

  • 紫外線吸収剤・・紫外線を化学的に吸収する物質。オキシベンゾン、桂皮酸化合物など。
  • 紫外線散乱剤・・鏡のように紫外線を跳ね返す物質。酸化亜鉛、二酸化チタンなど。

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  (紫外線散乱剤は鏡のように紫外線を跳ね返す)

 

アメリカでは現在、約16種類の日焼け止め成分が使われていますが、それらを検証した結果、安全かつ有効であるとFDAが認めたものは、なんと2つだけになりました¹⁾。

その成分とはすなわち酸化亜鉛(zinc oxide)と二酸化チタン(titanium dioxide)であるとFDAは述べています。いずれも散乱剤です。

これらは金属の粉なので、化学物質(吸収剤)に比べると、皮膚から吸収されにくく、また、長時間、汗や紫外線にさらされても効果が下がりにくいといえます。

散乱剤は、敏感肌用の日焼け止めによく使われています。ノンケミカルもしくは吸収剤フリーという表示のあるものは、散乱剤のみで作られているので安全といえるでしょう。

 

一方、紫外線吸収剤は、肌の上で紫外線を吸収して、熱に変えて放出する物質です。

 

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 それらは、化学反応を起こしながら紫外線を吸収していきますが、それとともに効果が下がっていくという問題点があります。

さらに今回FDAが問題視しているのは、紫外線吸収剤が、皮膚から体内に入ってしまうことです。

 

日焼け止めを皮膚に塗ったとき、予想以上に多くの成分が吸収されている

 

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  30年ほど前から、日焼け止めが広く使われるようになってきました。それを受けて、アメリカで、どのくらいの量が皮膚に吸収されるかについての実験が行われました。そしてその数字をもとに日焼け止めの安全性がはかられてきました。

 しかし、最近になってその実験の見直しが行われ、肌につけた日焼け止めは、実際には非常に多くの量が皮膚に吸収されていることがわかってきました(ものによっては、FDAの安全基準の数百倍もの量が体内に吸収されています)。²⁾

 吸収された成分は血中に入り、ものによっては数週間、体内にとどまります。

 そのため、上記ふたつの散乱剤(酸化亜鉛と二酸化チタン)以外の日焼け止め成分については、体内に吸収された場合の安全性が確認されるまでは、使用してはならないとFDAは述べています。

 

スプレー、シート、パウダータイプの日焼け止めにも疑問符が

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 スプレーやシートなどさまざまな形の日焼け止めが売られるようになりました。   ただしこれらは、極端にうすづきになってしまいます。

 日焼け止めは、1㎠の皮膚に対して2㎎の量を塗ったときに十分な効果を発揮します。これは、顔全体で500円玉大くらいの量になります。

 実際には、クリームタイプの日焼け止めでもその3~4分の1程度しか塗っていない人が多いといわれます。たとえば4分の1の量しか塗らなければ、UV効果は16分の1にまで下がります(SPF50のものでも効果はSPF3程度に下がります)

 スプレーやシートタイプの日焼け止めでは、十分な量を肌につけることが難しくなります。したがって、FDAはこれらに対しても、効果に関するデータが出されない限り、有効であると認めないとしています。

 

この夏の紫外線対策、どうするのが賢い?

FDAの基準はあくまで米国内のものなので、それに従わないといけないということではありません。

ただアメリカで安全性や有効性が疑問視されている成分を使うのも、やはり心配が残りますね。

それを考えると、以下のような対策が賢いといえそうです。

 

1 顔はパウダーファンデーションを使う

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パウダーファンデーションの粉体は、FDAが安全かつ有効と認めた二つの成分(酸化亜鉛と二酸化チタン)の、少なくともどちらかひとつを含むものがほとんどです。

クリームやリキッドタイプのファンデーションのほうが女性には好まれますが、UV対策のためにはパウダーのほうがおすすめです。

乾燥肌でパウダーファンデーションがつきにくいという人は、下にクリームタイプを塗った上からパウダーファンデーションをつけるとよいでしょう。

SPF値の高いUV下地を使う人が多いですが、それらは2時間以内に効果が下がってしまいます。また、メイクした上から下地を塗り直すことは困難です。

パウダーファンデーションは唯一、朝一度塗っただけで、一日中、UV効果を発揮します。

なお、ルースパウダー(白粉)でも似たような効果がありますが、パウダーファンデーションに比べると薄づきになるので、その分、効果が下がります。

朝のメイクのときは、スポンジでつけるタイプのパウダーファンデーションを使いましょう。途中でメイクなおしをするときは、ルースパウダーでもよいでしょう。

 

2 ボディは最大限、衣類などでUVカットを

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ボディの日焼けも悩ましいものです。面積が広いので、大量の日焼け止めを塗ることになり、肌からの吸収も心配です。

日常生活では、極力、衣類でガードするようにしましょう。

帽子、UV手袋、UVカーディガン、ストールなどを活用します。

ただし海などに行くときは、全身に日焼け止め(なるべくノンケミカルのもの)をしっかり塗ったほうがよいでしょう。

 

日焼け止めを使いすぎると有害である可能性がありますが、紫外線も有害です。紫外線は肌老化や皮膚がんの原因になることを忘れてはいけません。

 

 

 

¹⁾https://www.fda.gov/media/124654/download

²⁾https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2759002